ねぇ、ユカちゃん。学校で「親への恩返し」っていう題で作文を書く宿題が出たんだけど、恩返しってどうしたらいいと思う？

あ、私も書いたことあるよ。私の場合は、ママがひとりで私を育ててくれてるから、早く大人になって、働いて楽をさせてあげることが恩返しになるって思ったけど。

そうかぁ。うちは大家族で、両親にも祖父母にもすごく世話になってるし、誰に何をしてあげたらいいのか悩んじゃうんだよね。

ほほぅ。小学生にして恩返しのことで悩むとは、なかなか感心じゃのぅ。

和尚さん、どうやって恩返ししたらいいか教えてください。

まず「恩」とは何だと思うかな？

誰かに何かをしてもらったこと？

そうじゃな。仏教では「他から自分への恵み」を恩というのじゃ。

「他」って何ですか？

良い質問じゃ。他とは、自分以外のすべてを指しておる。親や家族はもちろん、親の親、その親とさかのぼった先祖にも、命という恵みを受け継いでくれた恩があるんじゃよ。

うわぁ、恩返しする相手が増えた……。

さらに、人だけではなく「もの」にも恩がある。例えば水や空気、太陽もそうだし、食べ物、衣服、家などから、数えきれない恵み、恩を受けて私たちは生きているんじゃよ。

はぁ……。数えきれないほどの恩をどうやって返せばいいんだろう……。

ふむ。そこで教えたいのが、「知恩・感恩・報恩」という仏教の教えじゃ。

ちおん・かんおん・ほーおん……？

難しい話ではありませんぞ。知恩とは、恩を知るということ。自分がどのような恩を受けて生きているか、生かされているかを知ることが、恩返しの第一歩なんじゃ。

じゃあ、第二歩は？

第二歩は感恩、恩に感謝すること。自分が受けているすべての恩に感謝し、ありがたいと思うことが大切なんじゃ。

最後は、ほーおん？

報恩とは、恩に報いること。つまり、受けた恩をムダにしないよう、恩によって生かされている自分を大切にし、自分もまわりに恩を与えられるように一生懸命生きることじゃ。

それが恩返しになるってこと？

そうじゃ。学校で世の中のことを学ぶことも、恩を知ることにつながり、感恩、報恩へと進んでいくんじゃから、まずは勉強に精を出してほしいのぅ。

勉強が恩返しとは、キツイなぁ……。