和尚と考える終活9:「遺産」はクセモノ(前編)
皆さんにとって最も大切なものは何ですか。
いろんな答えが返ってくるでしょうね。「命」「家族」、おそらくはこのあたりで落ち着くんじゃないでしょうかね。ありそうでないのが「お金」。そうなんです。みんな知っているんです、お金や財産は最重要物でないことを。
ところがこの「お金」のために、親族が他人でもしないような骨肉の争いを繰り広げるんです。「相続」が「争族」になったりしますね。
皆さんは財産をお持ちですよね。こういいますと「私は財産みたいなものもってやしませんよ」とおっしゃいます。ですが、素っ裸で暮らしている人は、少なくとも日本では見たことがありませんね。皆さんが着用している衣服、これ立派な財産なんですよ。
市街地に不動産がある、銀行にウン千万ある、これが財産だと思っているんでしょうが、そうではありません。皆さんが私有しているものすべてが財産なのです。
その財産、皆さんが亡くなったとたんに名前を変えます。「遺産」と改名するんです。さあこの「遺産」が実はクセモノです。どうクセモノなのか。「あればあるほど争族を産む」ということです。
先ほど最も大切なものは、「命」「家族」と言いました。命はひとつしかありませんから、あなたが亡くなった時点で消滅します。では次は家族でしたよね。その家族が、あなたが残したものによって、あなたが期待しない方向に行ってしまうということなんです。
「うちは大丈夫、遺言書を書いてあるから」と、よく耳にします。答えは「×」です。遺言書はあなたの遺志を伝える手段にはなりましょうが、あなたの求める大切な「家族」を守る手段にはなりません。
そのあたり次へ続きましょうかね。