和尚と考える終活58:認知症【3】~記憶障害とケア
認知症の特質としては、やはり「記憶障害」が顕著な形かなと思います。
認知症の方の物忘れを「悪性健忘」、一方、健康な方の物忘れを「良性健忘」と表現することがあります。認知症の方の物忘れの特徴は「体験全体を忘れる」ということです。健康な方は「物忘れをした」こと自体は覚えていますが、認知症の方の場合、忘れたこと自体を自覚できなくなるのです。体験したことがすっぽりと抜け落ちてしまうことから、本人の不安や戸惑いも大きくなるわけです。そして、その程度が徐々に進んでいく傾向にあります。
昔の記憶はしっかりしていても、新しい記憶が残らない状況になるわけです。また、時間・場所・人物の理解識別ができにくくなったりもします。そのほか失語や失行(行動がうまくできなくなる)、失認(目に見えるものが理解できない)などの症状が出る方もおられます。
前にも申し上げた通り、確固たる予防法、治療法は確立されていません。ですが、脳の疾患でありますから、できる限り脳を活性化する手助けにより、大きな効果が期待できそうですよね。その手助けの一つが「アクティビティケア」といわれるもので、「生活の質の維持」とも言われます。レクリエーション、音楽、園芸、回想、運動などを複合的に活用するケアで、これらは現在、高齢者施設やデイサービスなどで実践されています。
なれば。日常生活においても、普段からこのアクティビティケアを取り入れて生活すれば、認知症の進行を遅らせることにつながるかもしれませんね。