和尚と考える終活11:「棺桶」はどう選ぶ?
ある終活イベントに参加したことがあります。やはり人気のブースは葬儀屋さんでした。
「入棺体験」なるものがありまして、生きている間に棺桶に入るデモンストレーションをする、ということでございます。
そこにもうじき本番、いやこれは失礼。そろそろあっちへ行きそうな、もっと悪いですかな? まあ中高年しか来てませんから、みんなそんな感じですが、そのような方がたくさんおられまして、こっちの箱、あっちの箱と棺桶巡りをして、「中に畳が敷いてあって寝心地がいいから、私こっちにするわ」とか「外側の彫刻が立派だから優越感に浸れそう」等々好き勝手なことを口にしておられるんです。中にはね、「これはこの高さが高くって、またいで入りにくい」なんて言っておいでの方もおられました。
大きな声では失礼ですから、小声で言ってあげたんです。「本番は自分じゃ入れないんですよ」って。寝心地がいいって、本番では多分皮膚感覚ないでしょ。また優越感という感覚も、すでに脳の働きは停止してますからね。いやはや人間の欲望による錯覚とはとてつもないものなのだなと感じました。
ところでこの葬儀ですが、誰が執行しますかね。少なくとも亡くなったご本人でないことは誰でもわかりますよね。でも錯覚するんです、多くの人が。まるでご自身で自分の葬儀のプロデュースができるかの如くに。違いますよね、自分は箱に入ってじーっとしているだけですよね。じーっとしてなきゃダメなんです。ゴソゴソ動いたらそれこそ大騒ぎになりますからね。
つまり「棺桶」、どんなものでもいいじゃないですか。あなたの葬儀を出してくださる方に一任しておいたらいかがですか。