和尚と考える終活101:お世話になります【2】~迷惑をかける
「人さまには迷惑をかけないように」小さいころから母にいつも言われていたような気がします。皆さんはどうですか?「人に迷惑をかけない」大事な考え方ですよね。ですが、とらえ方を間違えると終活を阻むものになってしまいかねません。
「迷惑」って、嫌な響きの言葉ですよね? 嫌な響きの言葉だから、終活の取り組みの起因として「子どもたちに迷惑をかけたくない」という言葉が出てくるのです。しかし、よく考えてください。私たちは人に迷惑をかけないで生きていけるでしょうか。あるいは死んでいけるでしょうか。無理ですよね。
皆さん、お母さんのお腹から生まれましたよね。私は経験ありませんが、妊娠すると「つわり」があります。あれ、母親にしてみたら迷惑な話で、生まれてくる前からもう迷惑をかけていると言えませんか。で、生まれると、排泄も自分でできません。おしめをしてもらって、換えてもらって、人の手を借りっぱなしですよね。
この世に生を享けたときからずっと、どなたかにご迷惑をかけながら成長しているのです。ところが少し大人になって、何となくいろんなことが自分でできるような「錯覚」をし始めますと、「私は人に迷惑をかけていない」なんて横柄な考え方が出てきます。でも違います。自分の力だけで何かを成し得ることができますか? 食べ物、着る物、住むところ、何から何まで、自分の力だけでは得られないものばかりです。
私が思うに、そもそも自分の力なんてものはないんです。このことを理解すると、人は「謙虚」になれます。謙虚な思いが出てくると、「感謝」する心が引き出されるのです。
子どもたちに迷惑をかけない。そんな無理なことを選択するのは、もうやめましょう。迷惑をかけることだらけだから、日頃から「ありがとう」と感謝の言葉を発することが最も大切なのです。
家族間の良き関わり。これを維持することが、終活を成立させることになりますからね。